NPO法人子どもの環境を守る会Jワールド 「誰もが集い家族を感じる、新松戸のセツルメンツハウス」

インタビュー:三浦 輝江 さん、清澤 さちえ さん

 平日夕方、ドアを開けて中学生が「ただいまー」と入ってくると、スタッフが次々と「おかえりー」と声をかけます。Jワールドの「ユースペース」は、まさに「大家族」のやり取りで幕を開けます―

 Jワールドの活動は、副理事長の清澤さちえさんが牧師をしている松戸市小金原の教会で始まりました。理事長・三浦輝江さんは、教会で行われた保護者向けの子育てセミナーに1998年に参加したことをきっかけに、子どもや保護者が抱える悩みと向き合いはじめました。お子さんが小学校2,3年の頃、カードゲームが流行すると共に、カードほしさに万引きする子どもたちがいるといった話を聞くようになった三浦さん。2000年に新松戸リバイバルチャーチへ拠点を移したタイミングに、“地域に開かれた場所として誰もが集まれる場所へ、誰もが来て欲しい”という清澤牧師の思いで設けた部屋で、三浦さん・清澤さんら活動メンバーでJワールドにつながる「子どもの環境を守る会」の活動がスタートしました。
jworld_w_1 集う家族の子どもたちに社会と関わる活動、ボランティア活動をしてほしいと2001年に「Jキッズ」の活動が生まれ、そこに参加する子どもたちが友達を連れてきて居場所事業「ユースペース」が2006年に開始と、集う子どもたちの成長と共に始まります。活動の展開とともに2008年、NPO法人子どもの環境を守る会Jワールドとして法人化しました。

誰でもが来られる&大家族体験

 「誰でもが来られる」場を――という思いが、初期の「ユースペース」スタート時から最近受託している松戸市学習支援事業まで、Jワールドの事業の礎です。イベントではなく、生活の一部を共にする場として、子育てで悩んでいる・行き詰まっている親がふらっと来たり、子どもたちが友達を連れてきて子どもたちだけで来たり、又は家族で来たり。三浦さんは、来た人同士が自然にゆるやかな「大家族体験」をしている、と語ります。

市事業としても根付くミッション

 「誰もが来られる」「大家族体験」という2つのテーマは、松戸市との協働や事業委託でもしっかりと息づいています。2011年に始まった松戸市子育て支援課との協働事業「ゲットユアドリーム」では、中学生や高校生世代に向けて、自分の将来・夢を見つけてもらう事業です。仕事や働き方を紹介するプログラムで、ゲストを地域で見つけ、壇上から大勢に講演するのではなく、小さな輪で近い距離で、励ますように話してほしいと依頼しました。なかなか家で面と向かって父親と話すことが少ない中高生。彼らにゲストから、仕事のやりがいだけでなく、挫折や大変だったことも含め、人生として語ってもらう――ここでも「親」と「子」のふれあいが生まれています。団体としても、この協働実績やあいさつ回りで学校との顔の見える信頼関係の構築につながったといいます。
 今では週5回オープンしている勉強スペース(次段写真)でも「誰もが来られる」という信念のもと取り組んでいます。インタビューの場で「学習支援」という言葉がイコール貧困と強く結びついてしまっていて、あまり使いたくないと伺いました。年齢・学年が互いに違っても、勉強の時間はひとりひとりが集中し、休憩時間には会話を楽しむ、家庭の状況に依らない緩やかな関係・つながりが、参加者の未来につながっている様子が伝わって来ました。

jworld_w_2 三浦さんは活動の広がりを「めぐりあわせで、その時々でいろいろな方が話を拾ってくれてつないでくれての今です」と語ります。地域に居場所・フリースペースを開設するときの話をヒヤリングすると、他所ではどうやって常に人がいるようにし、維持管理をしていくかが大きな課題と伺うことが多いのですが、Jワールドでは常に開けていることが自然と実現できているそうです。ユースペースに参加していた子がスタッフとなって出勤簿に嬉しそうに○をつけて通っているエピソードも伺いました。
大家族の一員としての役割を感じ、その役割がここにいたい、大切にしたいという思いにつながり、誰かが常にいる場が生まれる――確かな活動が「ひと」と「きもち」のバトンをしっかりとつないでいます。