インタビュー:海老名 みさ子 さん
認定特定非営利活動法人外国人の子どものための勉強会(以下、勉強会)は、現在、常盤平と松戸市文化ホールの2か所で、週5回、日本語教室を開いている。通ってくるのは、母語が日本語ではない子どもたち、小学生から中学生まで40名ほどだ。滞在期間や保護者の状況、ルーツなど、その背景は様々。代表の海老名みさ子さんにお話を伺った。
子どもにこそ必要なんだ!
1990年前後、海外との交流が一気に推し進められ、日本語学校が急増、中国語を習っていた海老名さんは、資格を取って大人向けの日本語指導に明け暮れる。当時、日本語が分からない子どもが小・中学校に入り始めていたが、子どもはすぐに慣れるから習わなくても大丈夫、という時代。しかし、友人の中国人の子どもが、松戸に引っ越して学校のストレスから円形脱毛症になった、という話を聞き、子どもにこそ必要なんだ!と、バチッと子どもにシフトしたのがそもそものきっかけ。
とにかく困っている子どもたちのために
まず松戸の子どもたちを、と松戸市の教育委員会に。「中国やポルトガル等を母語とする人が2人いるので」と言われ、当時小学校に派遣されていたその人を訪ねると、手をこまねいていることがわかった。「とにかく始めよう」と仲間と2人で常盤平支所の一角で教室を開いたのが1996年5月のことだった。
その後も地道に活動を続け、3年後には松戸市文化ホール教室がスタート。2003年にはNPO法人格を取得。2006年には、常盤平駅北口そばのどうたれ内科診療所からの申し出でアパートの一室を借り、常盤平駅前に教室ができた。
将来自立して生きていくための支援
小中学生は日常生活の中で聞く、話すようになるのは簡単(「生活言語」)。しかし読み書きや学校の授業についていくための言葉(「学習言語」)はとても難しい。これを習わないまま中学3年となり受験勉強時で挫折、ドロップアウトになることを問題視し、必要なのは中学生の進学支援、というところにたどりつく。
一方、松戸の学校での日本語指導に求められるものは、「生活言語」に限られ、勉強は学校教育の範疇、と「学習言語」にまでは入り込めない状況にある。
勉強会は「学習言語」も視野に入れ、中学生特に3年生の高校受験に焦点を当てて指導。日本でずっと生活をしていくためには、高校進学が必要。基礎知識を学んで次の就労へつなげる、自立して生きていくための土台を身に付けさせたい、と言う思いが根底にある。
協働事業でできたこと・できなかったこと
協働事業は、制度ができた年にすぐに応募。提案内容は、夏期、冬期休みの日本語教室、そして日本語ボランティア養成講座、講演会等。このおかげで、念願だった年少者日本語教育第1人者の講師を招致でき、そしてボランティアは着実に増えた。これは大きな成果だった、と語る。ただ、協働の相手として、最初は、教育委員会にお願いしたが、協働というハードルが高く感じられたのかつながらず、その後、国際交流協会が協働相手となった。勉強会の存在を認識してもらえたのは成果だったが、制度での3年間が終了後は、事業継続の話はなかった。それ以降は市民活動助成制度他の助成金で活動の幅を広げている。
このように目の前の子どもたちに手を差しのべる活動を続けるうちに、信頼関係ができ、今では、教育委員会や学校から直接生徒を紹介されるようになった。2015年5月、20周年記念パーティーがスタッフによりサプライズ開催されメッセージ集をいただいて感激した、という一幕も。代表の海老名さんとスタッフのチームワークが、勉強会とその先の外国人の子どもたちを支えている。