松戸農業サポート協議会農業ボランティア部『野良の会』 「はじめは1人の想いから…松戸に広がる市民参加型農業」

インタビュー:笹山 誠二 さん

nora_01 平成23年に団体を設立し、その2年後には松戸市の協働事業提案制度において農政課との協働をスタートした「野良の会」。現在は会員の登録が70名を超え、農家さんとのつながりも徐々に増えているようです。団体を立ちあげた発起人であり、農業ボランティア部を取りまとめている笹山さんにお話を伺いました。

退職後の生き方を模索する中で…

― 活動が広がっている野良の会ですが、最初はどのように始まったのですか?

 私は59歳で早期退職をしたのですが、いざそうなってみると暇でしょうがない。何か世間に貢献できないかと考えていました。その時に、松戸には農家も多くあるので、お手伝いできないかと思い、農政課に相談に行きました。
 その当時、ボランティアの募集は受け付けておらず、有償のバイトで梨園を紹介してもらいました。その農家さんに、有償ではなくボランティアでやりたいと相談したのですが、それでは悪いからと断られ、結局1時間あたり500円のお礼をもらうことで始めました。しかし、自分としてはやはりお金に縛られないボランティアという形で継続したかったので、再度農政課に相談に行ったところ、我孫子で取り組まれている事例を紹介してもらったんです。

「援農ボランティア」という仕組み

 我孫子市では「地産地消」の推進を目的に協議会が作られていて、市が年間300万円くらいの予算をつけて取り組んでいます。農業に関心のある市民を募集し、研修をした上で人手不足に悩んでいる農家さんとマッチングします。
 私はここで1年間参加し、運営されている方々や農家さんと知り合うことができました。皆さん本当に良い人ばかりで、わざわざ松戸から来る私を不思議に思いながらも、暖かく迎えてくれました。

松戸でも広げたい!新たな出会い

― 団体立ち上げの経緯を教えて下さい。

 我孫子で活動しているうちに、とても良い仕組みだと感じたので、松戸でも同じように取り組むことができないかと考えるようになりました。それで色々と相談している内に、数人の仲間ができました。それが団体としての始まりです。会則や仕組みは我孫子を参考にさせてもらっています。メンバーの中には農業に詳しい人もいて、その後農協に相談しに行きました。この時に対応してくれた方が今も農家さんとのマッチングをサポートしてくれています。

松戸の農家さんとの関係づくり

 農協では「ハウス研究会」という農家さんの集まりを紹介してもらい、自分たちのやりたいことを説明させてもらいました。しかし初めのうちは「本当に出来るんか?」という反応でした。それでも会長さんや副会長さんが、まずはうちでやってみてくれと言っていただき、それから何ヶ月か私一人でハウス栽培のトマトや露地栽培のお手伝いを続けました。
 その内に他の農家さんにも理解していただくことができ、ボランティアの受け入れ先を確保することができました。仲間の協力もあり地域紙などでボランティアの呼びかけを本格的に始め、受け入れ農家さんは約10軒に増えています。
 松戸の農家さんは高齢で跡継ぎがいない方や、一人でやっている若い世代の方も多いです。今では野良の会を頼ってくれ、どうにか続けてほしいと言われます。

継続の難しさ…イメージとのギャップ

 4年間やってきて人も増えてきていますが、課題もあります。皆さん初めの内は意欲を持って参加してくれますが、実際に畑仕事を結構大変なんです。「腰が痛くて…」とかね。それに時期によっては農家さんが一番困る雑草取りが主な作業だったりしますから、楽しさが分かる前にやめちゃう人も多いです。ただ最近は事務的な所もサポートしてくれる女性が出てきて、とても助かっています。

市との協働で見えてきたこと

― 平成25年に農政課との協働を始められて、変化したことはありましたか?

nora_02 やはり市民の方からの信用度が上がりました。現在も広報まつどに農業ボランティア養成講座を掲載していただき、参加希望者の受付も役所の方でお願いしています。団体としては事務所がないので、頼りになっています。
一方で、募集を掲載できるのが広報まつどに限られることや、講座の微妙な雰囲気を伝えきれていないことなど、私達としても工夫していく必要があります。

土づくりから広がる街づくり

― 活動してきた中で感じたやりがいや、これからの夢を教えてください。

 昨年、農家さんの提案でボランティアへの感謝祭を開いてくださいました。お酒を飲みながら、やきそばやトン汁を作ってくれ、野菜やお花など沢山のお土産までいただいて…。これまでの成果を実感した瞬間でした。
 また保育園で畑のお手伝いをしているのですが、ここの子たちは野菜好きが多く、ゴーヤやピーマンを生で食べる子もいます。自分たちが種から育てたから愛着が湧くんでしょうね。これからはボランティアの人数も増やしつつ、それぞれのスキルを上げることで、保育園や老人ホームでの土いじりのサポートなど、活動の幅を広げていきたいと考えています。