栗ヶ沢中学校地域防災委員会「災害、助け合い、原点は『近助』」

インタビュー:所 正明 さん

栗ヶ沢中学校の教頭先生の呼び掛けから始まった

― 初めに、栗ヶ沢中学校地域防災委員会(以下、栗防)発足のきっかけは?

kuribou_01 4年程前の秋が起点になります。その年の春先に3・11が発生しました。当時の栗中の教頭先生より学校の危機管理の流れの中で呼びかけがありました。当初は学校主導でしたが、先生は次々に異動があること、避難所の運営は地域に委ねられていることなどから、栗中学区の町会・自治会主導の防災委員会となりました。

― 所さんが栗中防災委員会へ参加した理由はあったのですか。

私はもともと自分の属する町会で高齢化対策委員会を立ち上げ、地域社会での福祉面での活動を少し行っていました。その意味で、防災=福祉といった観点での関心があり、栗防の防災活動に少しでも福祉の観点を入れて考えて欲しいと思い参加しました。

― 助成事業を受けるということで行政との関係をつくっていったようですが。

特に行政との関係を作ろうということではないですが、我々の防災活動は松戸市地域防災計画を据えていたということはあります。ただ、23年の秋からスタートして、翌年の秋には25年度の松戸市の助成事業に応募し採択され25、26年度の2年間、制度を活用しました。急いだ訳ではありませんが結果的には早いかも知れません。
理由は簡単で地域社会のささやかな市民のボランティア活動とはいえ、直接経費はなんやかんや掛かります。その活動資金の一部を松戸市の助成事業が負担してくれるというので、それでは活用しようとなり、応募したわけです。

― 今年度からは協働事業ですね。

助成事業の2年目に入り、市民自治課からの協働事業にどうですか?という声かけがきっかけとなりました。防災活動を深化させるためにはより多くの予算、またこれまで以上の行政との関係の強化が必要になることと、私たちの活動への期待があるのであればと応募し採択されたのです。

市民活動助成から協働事業へ

― 栗防の活動とは、松戸市でも例のない広域での自主防災活動を行なっている点が大きな特徴だと思いますが、活動の初期の段階から資金面の調達という事があるのでしょうが、行政との関係を作ってきている。所さんご自身も含めて行政との関わりについての感想がありますか。

実は、私は現役の頃の仕事の関係で主に国の調査のような事を行っていましたので、本省の方々とは長いお付き合いがありました。その中で、市町村の方とのお付き合いも発生するのですが、国から降りてくるので市町村では最初から部長クラスの方に会うような感じでした。

しかし、現在のような市民活動の中での行政との関係では、自分の子どもの世代の若い方々とのお付き合いがあります。若さはそれだけで活力の源ですから、市役所の若手の職員の方との接触は心地よいものです。

― 協働事業であることを意識する、あるいはメリットを感じる時はありますか。

kuribou_02 例えば、私たちの一番の目標としての避難所の運営については、行政サイドは地域で運営を行って欲しいと言っています。実際に、行政が運営を行なうのには無理がありますので地域がやればよい、やるしかないと思っています。運営訓練なども訓練のための小委員会をつくり、準備を行なうのですが、この小委員会は実際に災害が発生し避難所が稼動した場合は、避難所の運営委員会として機能することになります。

しかし、どうも避難所の運営については協働事業としてのメリットはあまり感じません。むしろ、要配慮者支援としての会議については協働事業としてスタートする前から、会議の構成メンバーからして協働事業に近い形で進められている感じです。ただ、正式に協働事業になりましたので、会議そのものも栗防と危機管理課との共同主催になり、その分のメリットを活かすことをもっと考えたいと思います。

― 防災委員会には栗中学区に当たる11の町会・自治会等が参加しているということですが。

確かに11の町会・自治会等の方々が参加しており、構成は町会長、自治会長、防災リーダー、民生委員などです。但し、活動自体は地道なものですから、多くの住民の皆さんに認知していただき、活動を理解していただくには時間がかかります。未だに途中だと感じています。

防災の広域性が自主防災を呼んだ

― それにしても11町会・自治会を一つにまとめていくことは大変ですね。

kuribou_03 栗防は自主防災組織ですが、多くの町会・自治会にも各々自主防災組織はできています。ただ、私どものように11の町会等が連携した広域自主防災組織はなかったようです。

私たちの活動の大きな目標は収容避難所の運営です。避難所は当然ですが複数の町会等が利用するわけで町会同士が協力・連携することが必要です。防災は広域なのです。栗防の特長は、組織を動かすための事務局として、推進事務局を設置したこと。まさに推進するための組織で、私自身もこの推進事務局に属しています。

― 女性の参加もありますか?

防災委員会のメンバーは基本的に男性が中心ですが、推進事務局には1人女性が入っています。実は、避難所の運営を考えますと女性の参加を望んでいます。収容避難所とは寝泊りする施設で生活の場になるので、普段、日常的に生活を支えている女性の役割が大変大きいと思っています。そういった意味からも防災委員会にももっと女性の参加を願っています。幸い、最近委員会に若い女性の参加があるようですし、11月に栗中で予定している防災訓練にも聖徳大学の女子大生の参加があります。

要配慮者への支援は平時から必要

― 栗防には2つの大きな目標の1つは避難所の運営。もう1つは?

私が栗防に加わった理由にもなるのですが、福祉、具体的には要援護者と言われる人たち―今では要配慮者といいますが―の支援です。災害が発生してから応急救護の観点でケガや家屋の倒壊により下敷きになった方の救助等、いわゆる救命救護は必要ですが、もともと潜在的に地域社会に暮らしていて支援が必要な方々への視点も必要なのです。

kuribou_04 そこで、福祉部門の方々を含めて行政や民間の医療・介護関係、それと地域の福祉系の団体等を構成メンバーにお願いして、要配慮者支援会議を始めています。要配慮者支援の具体的な仕組みづくりができればと期待しています。

防災という地域課題が栗防と危機管理課を結びつけた

― 最後に協働の観点からコメントをいただけますか?

kuribou_05 町会、自治会による自主防災組織が存在していますが、どうも「自主」とは言いながら自主防災組織の編成は行政主導になりがち。広域自主防災組織である栗防は行政主導でつくったわけではありません。一つのきっかけがあり、地域の住民主導により編成されました。そのように考えますと、栗防が、目標を共有する異なる主体である松戸市の危機管理課と、協働事業として新たな仕組みや事業を創りだしたり、取り組むことは自然の成り行きだったのかも知れません。

インタビューを終えて

―― 2013年の栗ヶ沢中生徒への栗防アンケート調査では「災害が発生し避難生活が始まったとき、何かを手伝いたいと思いますか」の問いに対して68%の生徒が手伝いたい、手伝えると回答しています。頼もしく、うれしいこと、活動が広がった現在、もっと数値が上がっているでしょう。栗中学区の各町会等が防災活動に賛同し協力し合っていることが、実際の災害発生に伴う収容避難所の運営につながる大きな源と感じました。