緑のネットワーク・まつど 「松戸の“緑”を支えるネットワーク」

松戸って緑豊かな街?

 松戸に住んでいる中高生たちに、質問すると大体が「そう思う!」「多いんじゃない?」と返ってくる。おそらく21世紀の森と広場や常盤平のさくら通りなどの印象があって、こう答える子どもたちが多いのではないかと思われる。
 しかし、実際は千葉県内で下から数えて数番目というのが現状だ。もちろん都市化を進めれば、その代償として緑が失われていくのは当たり前だが、年々樹林地は減少し、子どもも大人も自然にふれる機会は少しずつ失われていっている。
 そんな中で、松戸市には地域に残された貴重な樹林地の手入れや保全をしている「松戸里やま応援団」やいくつかのグループがあり、現在17箇所でボランティア活動をしている。
midori_1_w インタビューを行った「緑のネットワーク・まつど(以下、緑ネット)」は、この仕組みづくりに関わり、今も様々な団体や行政との協働を下支えしている市民団体である。

はじまりは関さんの森から…

 前のインタビューで取材した新松戸地域の「関さんの森」、昔から親しまれたこの里山を残すために集まった有志から派生し、市内で樹林地の保護と管理を目的とする7つの市民団体により2000年4月に「緑ネット」は設立された。当初から外部の団体や人とのつながりを大切にしながら、行政との協働にも取り組んでいる。
midori_2_w 現在は市内の貴重な樹林と、緑の大切さを多くの人に知ってもらうために、残したい松戸の緑を訪ねるガイドツアー「松戸のみどり再発見ツアー」を年に数回行っている他、毎年5月に開催される「オープンフォレストin松戸」に参画し、主に広報や森めぐりツアーの企画などを担っている。このオープンフォレストは、平成28年の「みどりの愛護」功労者 国土交通大臣表彰を受賞した大きなイベントである。

市との連携による成果の広がり

 「緑ネット」が発足するのと同時期に緑推進委員会という市への提言を行う組織が条例に基づき設置された。委員には「緑ネット」のメンバーも数名入っており、その後のボランティア組織による樹林地保全やネットワークづくり、市民・企業・行政の三者協働について提言がまとめられた。
midori_3_w また現在、みどりと花の課が市民団体である里やま応援団などと共催で取り組んでいる「里山ボランティア入門講座」にも協力しており、ネットワーク型組織ならではのノウハウやスキルを提供している。本講座は今年で14回目となり、毎年その修了生は市内の里山をフィールドとして活躍している。里山は市が所有者と交渉し、活動の了承を得る形を取っており、信頼度が高い行政だからこそできる役割分担になっている。
 基本的には各回の受講生が1つのグループを立ち上げ、これまで人の手が入っていなかった里山で活動をスタートする。緑ネットでは、同じ志を持った仲間たちが横のつながりを広げ、市民だけではなく行政とも連携を行っていくため、その支援を行っている。

身近な緑を次世代に伝えるために…

 「そもそも何故、都市に残された樹林地は人の手を入れる必要があるのか?」という素朴な質問を聞いてみたところ、その答えは「現在残されている里山が人の手によって作られたから」というものだった。人の生活に必要なエネルギーや建物の材料は全て樹木で賄われていた時には、自分たちに必要な「スギ・ケヤキ・コナラ・クヌギ」などを植林し、それぞれちょうど良い高さになった時に、伐採することでバランスが保たれていたという。しかしいつの間にか需要がなくなり、放置された樹林地は荒れてしまい、背の高い樹木だけが生え、鬱蒼とした場所になる。こうなると多様な生物も住み着かない場所になってしまうとのこと。中には外部からゴミを投げ入れられ、危険な状態になっている所もあるそうだ。
 松戸市に残された樹林地は市全体の約4.2%、250haとされているが、里やま応援団のメンバーが入っているのは、まだ数十haに留まっている。毎年ボランティアの養成は行われているが、その活動先が見つからないというケースもここ数年起きている。「緑ネット」では、これからも身近な緑に触れてもらうための機会をつくり、理解者を1人でも増やしていくこと、実際に里山に入る仲間づくりに取り組んでいきたいとのことだ。

学んだことをその場で活かし、喜んでもらえるのがやりがい

midori_4_w 「10年以上もこの活動に関わっていても、新しい発見や学びが沢山ある。里山にどんな植物が生えていて、どんな生き物がいるか、そんなことを森に訪れた人たちに知ってもらうのは楽しいです」
 今回お話を聞かせていただいた、「緑ネット」の副代表藤田さんはこう語る。